Surface Pro 4 / 3 ビジネス活用日記

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Office for iPadが示すMicrosoftのマルチデバイス戦略と出遅れた日本市場の行方

 

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ブリーフィングにおいてナデラCEOが強調していたのは、クラウドのサービスをすべてのユーザー、そしてすべてのデバイスへとつなげていくと言う点だ。

この日のテーマに沿って言えば、Microsoft Office書類をすべてのユーザーの持つあらゆるデバイスから利用できる環境を拡大していくということになる。その新しい第1歩が「Office for iPad」というわけだ。

【イベントレポート】米国をはじめ世界135地域で配信の始まった「Office for iPad」 〜Office 365契約者向け。無償利用ではOffice書類の閲覧が可能 - PC Watch

 

Office for iPadの登場は、マルチデバイス&サービス重視への転換を象徴

 

既報のとおり、日本時間3月28日早朝に、Office for iPadの提供が開始されました。

 

Nadella CEOがわざわざ記者会見を開いてこの製品を発表する一方、Windows関係製品には全く触れることがなかったのは、Windows OSの独占的地位を前提にした従来の戦略からの転換を強調する意図があったものとみてよいでしょう。

 

では、転換した先はどこになるのか? それは、「マルチデバイスで動作する強力なサービスを提供する」という戦略です。ただし、日本市場は、この転換に取り残されるようです。

 

好評のOffice for iPadだが、日本市場では提供されない

 

Office for iPadは、機能面で簡易版の域を超え、Windows版のOfficeにより近いものになっているようです。

 

Office for iPad on both the new iPad Air and iPad mini with Retina Display runs like a dream, without any noticeable lag or hangups.

Office For iPad Review: Surprisingly Worth The Wait | TechCrunch

 

また、米国のApp Storeで上位を独占するなど、ユーザーにも好意的に受け入れられているようです。

 

iPad版Officeヒット中:米国チャートでWordが1位、Excelが3位、PowerPointが4位を占める | TechCrunch Japan

 

このようにユーザーの関心を集めるOffice for iPadですが、世界135か国というほぼ全世界同時リリースの体制にも関わらず、日本市場では提供されないことが確認されています。

 

日本マイクロソフト株式会社は、米国時間の27日に発表された「Office for iPad」の日本提供に関するブログ記事を公開し、日本市場への提供を現時点では行なわないことを正式に表明した。

日本マイクロソフト、「Office for iPad」の国内提供を見送り - PC Watch

 

これは、なぜなのでしょうか?

 

個人向けOffice 365が不在の日本市場には、Office for iPadは投入できない

 

上記の公式発表の中では、「なぜ日本市場にOffice for iPadが投入されないのか」理由ははっきり書いていません。

 

したがって、推測するしかないのですが、iPad版のリリースと同時に無料化(従来は国外のOffice 365契約者のみが利用可)された"Office Mobile for iPhone"が日本のApp Storeに登場したことを考えると、その理由は「Office 365」にあるとみて間違いないでしょう。

 

プロライターの本田雅一さんは、以下のように考察しています。

 

"日本向けだけ提供されない”という点が引っかかっている読者もいるだろうが、これは日本市場だけパーソナル版のOfficeが作られ、パソコンへのプリインストールが実施されていることと無関係ではない。海外では”購読型”に一斉に移行されたOfficeだが、日本ではプリインストール版があり、その代わりに家庭向けのOffice 365が存在しない。

マイクロソフト新CEO、iPad版Officeを発表。事業改革を加速(本田 雅一) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

日本市場では、プリインストール版のOfficeが一般的であるため、海外で販売されている個人向けのOffice 365が存在していません。このため、Office for iPadに課金することができず、提供ができないのです。

 

Office 365とマルチデバイス戦略を阻むプリンストール版のOffice

 

「日本国内ではOffice 365を個人向けに提供しない」という方針は、三浦優子氏のレポートによると、昨年Office 365が登場した際に、日本法人が日本市場の特性を考慮して決めたものとされています。

 

具体的な理由は、「日本のユーザーは自分でソフトを入れたくない」「日本の家庭に5ライセンスは多すぎる」ということのようです。

 

「日本ではPCを使っているが、自分でソフトをインストールしたくないというお客様も多いのです。あらかじめ入っているソフトを使えばそれでいいと考えられるようです」(松田氏)

 

「日本では2ライセンスで十分という声が多いのです。果たして、日本の家庭に5ライセンス必要なお宅がどれくらいあるのかというのも社内で議論されたことでした」(三野氏)。

【三浦優子のIT業界通信】なぜ日本のOffice 2013のライセンス形態が特別なのか - PC Watch

 

これが、はたしてOffice for iPadやOffice 365のような重要な製品の国内投入を見送らざるを得ないほど重い理由なのか、何とも判断がつきかねます。

 

単に、パソコンにOffice Personalの代わりにOffice 365をバンドルして売れば済む話のような気もします。また、「Office 365 Personal」の今春投入がすでに発表された今となっては、ライセンス数が多すぎるという問題もなくなります。

 

iPad版は年内に国内投入される? ならばOffice 365も・・

 

こうした中、日経新聞は「Office for iPad」が年内に国内でも提供されるとの見通しを示しました。

 

同日から文書作成の「ワード」、表計算の「エクセル」、プレゼンテーション資料作成の「パワーポイント」の各アプリ(応用ソフト)の提供を始めた。日本は当初の対象市場である135カ国・地域に入っていないが、年内に対応する。

iPadに「オフィス」、日本も年内対応 マイクロソフト :日本経済新聞

 

情報源が明示されていませんが、これが事実なら、Office 365の個人版もiPad版と同時に国内提供される可能性が高いと思われます。

 

Office 365の普及は、OfficeプレインストールSurfaceシリーズと日本のパソコンにどのような影響を与えるのか?

 

Office 365の普及は、OfficeがプレインストールされたWindowsベースのハードウェアのあり方を揺さぶるインパクトがあるのは間違いありません。

 

はたして、Windows OSとWindowsマシンの行き先はどうなるのか?

この疑問の答えば、来週のbuildカンファレンスをお楽しみに、ということでしょう。

 

 

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